【2026年版】128冊読んだ活字中毒が選ぶ教養本+文学ベスト16冊

この記事でわかること

  • 2025年に読んだ128冊の中から、特に刺さった本を厳選紹介。
  • 「砂糖の世界史」から「Uber革命」まで、当たり前の景色をひっくり返す教養本6冊。
  • ラノベ嫌いが「本好きの下剋上」に完全陥落し、英語版まで読み漁った経緯。
  • ニーチェ、蟹工船、ハサミ男。やっぱり文学はいい。
  • 2026年に読むべきトレンド作品4選も追加。

2025年を振り返ると、私の脳内は常に文字列で埋め尽くされていた気がします。Kindleで110冊、E-bookで10冊、図書館や書店で購入した書籍が8冊。合計128冊を胃袋に収めた計算になります。

余談ですが、民間の図書館というのは侮れません。たまたま在庫整理(除籍本の放出)に遭遇し、貴重な資料をタダ同然で譲り受けることができたりと、恵まれた年でした。今回はその128冊の中から特に刺さった作品と、2026年に読んでおきたいトレンド作品をまとめて紹介します。

教養系

ノンフィクション。「当たり前」だと思っているものの皮を一枚めくると、そこにはドロドロとした歴史と構造が潜んでいます。

砂糖の世界史(川北稔 / 岩波ジュニア新書)

【ジャンル:世界史・社会】

コーヒーに何気なく入れているその白い粉。「砂糖の世界史」は単なる食品の歴史ではありません。砂糖という切り口から植民地支配と奴隷制度がいかにして近代資本主義を太らせたか、という文脈まで丁寧に書かれています。

かつて茶会で砂糖を誇示したイギリス貴族たちの優雅な生活が、カリブ海のプランテーションで使い潰された無数の命の上に成立していた歴史。ジュニア新書だからといって侮るなかれ。テンポが良く、大人が今こそ読むべき一冊です。

UBER ウーバー革命の真実(立入勝義 / ディスカヴァー・トゥエンティワン)

【ジャンル:ビジネス・テクノロジー】

これを読んで痛感したのは、日本のタクシー業界という既得権益の頑固さです。はっきり言いますが、日本のタクシーは高すぎる。海外でUberやGrabを使い倒した後に帰国すると、余計にそれを実感します。

この本はUberがいかにしてその壁を壊したか、「破壊的イノベーション」の正体を描いています。同時に、アルゴリズムによって管理されるドライバーたちの過酷な労働環境も浮き彫りになります。市場は競争力を持つべきだと感じながらも、その功罪を考えさせられる一冊でした。

UBER ウーバー革命の真実

UBER ウーバー革命の真実

  • 作者:立入勝義
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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現代民俗学入門(島村恭則 / 創元社)

【ジャンル:民俗学】

今年の一推しノンフィクションを挙げるなら、間違いなくこの一冊。私たちが何気なく行っている冠婚葬祭や季節の行事。その一つひとつに、合理的な理由と不合理な情熱が混ざり合っていることを教えてくれます。

学問とは世界を難しくすることではなく、今見ている景色をより豊かにすることなのだと再確認させられました。読み終えた後、普段の生活を見る目の解像度が確実に変わります。

電柱鳥類学(三上修 / 岩波科学ライブラリー)

【ジャンル:科学・生態学 / 岩波科学ライブラリー298】

普段、電柱なんて見上げますか? この本を読んでから、その辺の景色が一変しました。都市の野鳥という一点だけで都市の生態系を読み解く。解像度が上がるというのは、こういう体験を言うのでしょう。

著者・三上修氏の執念は凄まじい。電柱のトランスの影、電線の太さ。鳥たちがいかに人間のインフラを利用して生存戦略を立てているか。科学者の狂気とも言える観察眼が、ただの鉄と線の塊に命を吹き込む。これぞ読書の醍醐味です。

ビジョナリー・カンパニー(ジム・コリンズ&ジェリー・ポラス / 日経BP)

【ジャンル:ビジネス・経営】

ビジネス書を読んでいると色んなところで紹介されており、ずっと気になっていた古典です。DisneyやSonyがなぜ強いのか。それは「ミッション」という背骨があるからです。

時流に流されず、自分たちが何者であるかを定義し続けること。小手先のテクニックではなく、100年単位で通用する思考の骨格を教えてくれる。バックボーンのない事業は脆い、という本質はスタートアップ全盛の今こそ響きます。

カスタマーサクセス(ニック・メータほか / 英治出版)

【ジャンル:ビジネス・SaaS】

サブスク全盛の今、「売って終わり」のビジネスは死に絶えます。顧客をいかにファンにし、成功体験を提供し続けるか。

顧客の成功を自らの成功と定義する。この一見「きれいごと」に聞こえる思想を徹底的に論理化・数値化していくプロセスは圧巻でした。継続的に何かを提供する立場にある人間なら、一度は通るべき門だと思います。

フィクション

ライトノベル、古典文学、日本文学。ジャンルを問わず、脳を焼かれた6作。

本好きの下剋上(香月美夜 / TOブックス)

【ジャンル:ライトノベル・異世界ファンタジー / 全33巻(第一部〜第五部)】

普段、ライトノベルは読みません。食わず嫌いと言われてもいい。しかしこれだけは別格でした。気づいたら全巻購入ボタンを押していました。それだけでは飽き足らず、日本語版を読了後に英語版(Ascendance of a Bookworm)で読み直すという状態にまで至っています。

紙がないなら作ればいい。印刷機がないなら作ればいい。木簡やパピルスに挑戦する描写は教養本としても楽しめます。中盤以降はファンタジー要素が色濃くなりハリー・ポッターを彷彿とさせる展開もあり、ラノベ嫌いこそ読んでほしい一冊です。

※Kindle Unlimitedだと無料でした。

嵐が丘(エミリー・ブロンテ著 / 小野寺健訳・光文社古典新訳文庫)

【ジャンル:英国古典文学 / 原著1847年】

英語版と日本語版(小野寺健訳)の二刀流で楽しみました。ヨークシャーの荒涼とした風土、ヒースの茂る荒野。英国の陰鬱で美しい空気が最も凝縮された一冊です。小野寺さんの翻訳は古典特有の堅苦しさを見事に取り払っており、驚くほど読みやすい。

原著者エミリー・ブロンテが暮らしたヨークシャーのハワースにある生家は、現在「ブロンテ・パーソネッジ博物館」として一般公開されています。観光で訪問したことがあるのですが、作品を読む前に行ってしまったのが少し後悔。

ツァラトゥストラはこう言った(ニーチェ著 / 氷上英廣訳・岩波文庫)

【ジャンル:哲学・文学 / 原著1883〜1885年】

「神は死んだ」のニーチェですが、今回読み直して興味深かったのは歴史的背景とのリンクです。魔女狩りのような宗教的狂気と、それへのアンチテーゼ。アニメ「ち。―地球の運動について―」(2024年)の歴史的背景を思い浮かべながら読むと、宗教権力と知の自由の対立がよりリアルに感じられます。

※ゴリゴリの哲学です。難易度高いため注意。サンプルを読んでから購入したほうが良いかもしれません。

ハサミ男(殊能将之 / 講談社文庫)

【ジャンル:国内ミステリ / 叙述トリック】

ミステリ好きとして一言だけ言わせてください。このオチは神がかっている。東野圭吾「容疑者Xの献身」も好きですが、この「ハサミ男」の騙しの技術は次元が違う。叙述トリックという言葉で片付けるには、あまりに丁寧で大胆な伏線。途中からページをめくる手が止まりませんでした。

読み終えた瞬間、すべてを読み返したくなる衝動です。ネタバレを踏む前に今すぐ読んでください。

四畳半タイムマシンブルース(上田誠原案・森見登美彦著 / 角川文庫)

【ジャンル:国内文学・SF / 2020年刊行、文庫版2022年】

森見登美彦が描く、腐れ大学生の痛快なストーリー。四畳半という小宇宙で展開される、あまりに矮小で、だからこそ愛おしいSF。「昨日壊れたクーラーのリモコンを直す」ためだけに過去へ飛ぶという馬鹿馬鹿しさ。

しかしその下らなさの影に、二度と戻らない青春の輝きが隠されている。タイムパラドックスの整合性を保ちながら、最後は「まあ、いいじゃないか」という京都的楽天主義に帰結する。頭を空っぽにしながら「本を読むって楽しいな」と素直に思える作品でした。

※たまにKindle Unlimitedで無料になってます。無料じゃなかったら待ってもいいかもしれません。

蟹工船(小林多喜二 / 岩波文庫)

【ジャンル:プロレタリア文学 / 原著1929年 / 青空文庫で無料公開中】

現代人こそ読むべき一冊。資本主義と聞いたらまずこの本が頭に浮かびます。労働とは何か。ブラック企業なんて生ぬるい、命を搾り取られる現場のリアリズム。「おい、地獄さ行ぐんだで!」という冒頭は、今の時代にこそ重く響きます。

Uberのドライバーたちの話とも通じますが、私たちは本当に自由になったのか、それとも別の場所へ収監されただけなのか。

2026年に読むべきトレンド作品4選

2024〜2025年に刊行・話題になり、2026年も読まれ続けるであろう作品を前掲12冊とのつながりで紹介します。

成瀬は天下を取りにいく(宮島未奈 / 新潮社)

【ジャンル:国内フィクション・青春小説 / 2023年刊行 / 2024年本屋大賞受賞】

滋賀県大津市を舞台に、「常に天下を取りにいく」姿勢を崩さない女子高生・成瀬あかりとその親友の青春を描く連作短編集。2024年本屋大賞受賞作。

軽快な文体で一気読みできるため、読書習慣を取り戻したい人の入口にも最適です。続編「成瀬は信じた道をいく」と合わせて読めるのも今の強み。「好きなことへの狂気的な執着心」という点で「本好きの下剋上」のマインと通底するキャラクターで、あの作品が好きだった人に特におすすめです。

ハンチバック(市川沙央 / 文藝春秋)

【ジャンル:国内純文学 / 2023年刊行 / 2023年上半期芥川賞受賞 / 約100ページ】

重度障害を持つ女性・井沢釈華が、Kindleを読むためだけに生きていると語るところから始まる衝撃的な一作。

「本を愛する者の物語」という点で「本好きの下剋上」と鮮明な対比をなします。マインが「本を作るために生きる」なら、釈華は「本を読むために生きる」。128冊を読んだ活字中毒者こそ刺さる、読む行為の意味を根底から問い直す一冊です。

言語の本質(今井むつみ&秋田喜美 / 中公新書)

【ジャンル:言語学・認知科学 / 2023年刊行 / 2023年新書大賞第1位 / 中公新書2756】

「ことばとは何か」「人はいかにして言語を習得するか」をオノマトペ(擬音語)を切り口に解き明かす言語学の入門書。著者は今井むつみ(慶應義塾大学教授)と秋田喜美(名古屋大学教授)。

AI・大規模言語モデルが日常に浸透した今、「人間の言語と機械の言語はどう違うか」という問いが急速に切実になっています。本書はその問いへの最良の入口です。「現代民俗学入門」や「電柱鳥類学」と同じ「日常の解像度を上げる」系統の一冊として、合わせて読むと効果が倍増します。

存在のすべてを(塩田武士 / 朝日新聞出版)

【ジャンル:国内ミステリ・社会派小説 / 2024年刊行 / 2024年本屋大賞ノミネート】

30年前の幼児誘拐事件と、その後に育った「二人の誘拐された子供」の運命を描く長編小説。著者は塩田武士。骨太な取材に基づく圧倒的なリアリティが特徴。

「ハサミ男」を読んで叙述の技術に舌を巻いた人に強くすすめます。ミステリとしての仕掛けに加え、「アイデンティティとは何か」「育ちが人を規定するか」という普遍的な問いが通底しています。500ページ超の大作ですが、一気読み必至です。

存在のすべてを

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以上、2025年の読書録から厳選12冊+2026年注目の4冊でした。教養本は「当たり前」をひっくり返し、フィクションは「別の時代・別の場所に生きる感覚」を与えてくれます。今年もまた、活字の海で溺れ続けます。