- 「嫌われる勇気」3つの衝撃ポイントをわかりやすく解説
- アドラーの「目的論」「課題の分離」「タテの関係」とは何か
- 英語版「The Courage to Be Disliked」の情報と、英語学習での活用法
- アドラー心理学を完璧にやろうとすると逆効果な理由
「頑張っているのに劣等感が消えない」「人の評価が気になって疲れてしまう」——そんな悩みを抱えていませんか?
2013年に出版されて以来、200万部以上売れ続けているベストセラー「嫌われる勇気」。本書はアドラー心理学をわかりやすくまとめた一冊です。
「人生観が変わる」という言葉は安易に使われがちですが、この本は本質的な意味でそれを実感できる本だと思っています。読み終えたあと、世界の見え方がじわじわと変わっていくのを感じました。
今回は、本書の中でも特に「ここは衝撃だった」というポイントを3つ厳選して解説します。あわせて、海外でも高く評価されている英語版「The Courage to Be Disliked」についても紹介します。
「嫌われる勇気 ── 自己啓発の源流「アドラー」の教え」 岸見一郎・古賀史健 著 / ダイヤモンド社
本書は「自己啓発の父」と呼ばれる心理学者、アルフレッド・アドラーの思想を「青年と哲人の対話」という形式でまとめた一冊です。アドラーはフロイト、ユングと並ぶ心理学の巨頭でありながら、日本では長らくあまり知られていない存在でした。
難解な専門書ではなく、身に覚えのある青年の「反論」を通じてアドラーの思想がほぐされていくので、読んでいるうちに自然と自分の悩みと重なっていきます。
特に「頑張っても頑張っても劣等感が消えない」という方には刺さる内容だと思います。今回はその中でも衝撃だったポイントを3つ、具体例を交えて解説していきます。
まず1つ目のポイントは、アドラーが提唱する「目的論」という考え方です。
「目的論?なんか難しそう……」と思った方、安心してください。具体例で考えると一発で腑に落ちます。
あなたの会社で、若手社員が上司にめちゃくちゃ怒鳴られています。
あなたはどう思いますか?「あ、若手がミスをしたから怒られているんだな」——おそらく、そう思いますよね。
この「ミスがあったから→怒鳴っている」という考え方が、アドラーの言う「原因論」です。そしてアドラーは、この考え方を全力で否定します。
上司が怒鳴っているのは、ミスが「原因」だからではない。「若手に歯向かわせたくない」「上下関係を見せつけたい」という目的があるから怒鳴っているのだ。
最初は「そんな……」と思いました。でも、よく考えてみると確かにそうなんです。同じミスをしても、激しく怒鳴る上司もいれば、淡々と注意するだけの上司もいる。ミスの大きさ(原因)が同じなのに、なぜ反応が違うのか?それは、それぞれが持つ「目的」が違うからです。
| 考え方 | 原因論(フロイト) | 目的論(アドラー) |
|---|---|---|
| 考え方の軸 | 過去の原因が現在の行動を決める | 現在の目的が行動を決める |
| 怒鳴る理由 | ミスがあったから | 威圧したい目的があるから |
| 人間観 | 過去に縛られた存在 | 目的を持って行動する自由な存在 |
この目的論が本当に刺さるのは、自分自身に当てはめたときです。
「両親が離婚しているから、自分は幸せな結婚なんてできないんだ」
「一人っ子で暗い性格だったから、人と楽しくコミュニケーションがとれない」
これらはすべて、アドラーが否定する「原因論」に縛られた考え方です。アドラーに言わせれば、こういった発言の裏には「失敗が怖いから、過去を言い訳にしている」という目的が隠れているとのこと。
人とコミュニケーションをとることにはリスクがあります。嫌われるかもしれない。その怖さを回避するために「自分は昔から暗かったから無理」という過去を都合よく使っているだけ、というわけです。
これ、かなりきつい言葉でもあります。でも同時に、ものすごく解放される言葉でもある。過去がどんなに暗くても、今この瞬間から変われる。そういうことだと思います。
2つ目のポイントは、「課題の分離」という考え方です。これが本書の中で最も実践的で、日常生活に即効性があるポイントだと感じました。
自分がコントロールできることは一生懸命やる。
自分でコントロールできないことは、考えることさえするな。
本書の中で出てくるたとえ話が秀逸です。
馬を水辺に連れていくことは「自分の課題」として実行できます。でも、その馬がゴクゴクと水を飲むかどうかは「馬の課題」であり、自分にはコントロールできません。他人の課題にまで悩んでいるから、疲れるのです。
「一生懸命頑張っているのに、上司が全然評価してくれない。どうすれば評価してもらえるんだろう……」
これ、課題の分離がまったくできていない悩み方です。整理してみましょう。
| 課題の種類 | 内容 | 向き合い方 |
|---|---|---|
| 自分の課題 | 営業成績を上げる努力をする。誠意を持って上司に接する | 全力でやる |
| 他人の課題 | 上司が自分をどう評価するか | 考えない。シカトする |
自分がやるべきことをやり切ったあと、上司がどう評価するかは「上司の課題」です。そこに悩む時間とエネルギーを使っても、疲れるだけで何も変わりません。
もしそれでも不当な評価を受けるなら、「自分が異動できるように動く」「転職活動を始める」という、自分がコントロールできる行動に切り替えるだけです。「この上司に変わってほしい」と思うことは他人の課題への干渉であり、残念ながらほぼ無意味です。
この「課題の分離」は、言い換えると承認欲求を手放すということでもあります。「誰かにすごいと思われたい」「誰かに認めてもらいたい」という気持ちで行動すること——それはつまり、自分でコントロールできない「他人の評価」をゴールにしてしまっているわけです。
特に日本は、承認欲求を刺激することで人を動かす仕組みになりがちです。だからこそ、意識的に「これは自分の課題か、他人の課題か」と問い続けることが大切なのだと感じました。
3つ目のポイントは、「タテの関係を作るな」というもの。そして、その具体的な行動として本書が提唱しているのが……
人を褒めてはいけない。
「えっ、褒めたらダメ?」と、最初は意味がわかりませんでした。心理学なら「褒めて伸ばせ」が定番じゃないんですか、と。
アドラーが「褒めるな」と言う理由はシンプルです。褒めるという行為には、自然と上下関係が生まれるからです。
「褒める側」と「褒められる側」を思い浮かべてみてください。無意識のうちに、褒める人が上で、褒められる人が下、という構図になっていませんか?この縦の関係が、承認欲求を生みます。
会社の報酬制度や「褒めて伸ばす上司」は、一見良さそうに見えますが、アドラー的に言えば「承認欲求の奴隷を量産するシステム」になっているわけです。
「じゃあ、頑張っている部下や子どもに何も言わないのか」という疑問が当然出ます。アドラーが勧めるのは、褒めるのではなく「ありがとう」と感謝することです。
| 褒める(NG) | 感謝する(推奨) | |
|---|---|---|
| 言葉の例 | 「よくできたね」「えらいね」 | 「ありがとう」「助かりました」 |
| 関係性 | 評価する側・される側(縦) | 対等な感謝(横) |
| 承認欲求への影響 | 刺激する・奴隷化する | 刺激しない・対等を保つ |
感謝は目上の人にも、子どもにも使える言葉です。「ありがとう」には上下がありません。だから承認欲求を刺激せず、対等で健全な関係を保てると本書は述べています。
ただし注意点があります。「絶対に感謝されなければ」と思い始めると、それもまた「他人の課題」への執着になってしまいます。自分が大切な人のためになることをした、それだけで十分だと「自己満足」できることが、実は最高のモチベーションにつながるのかもしれません。
「The Courage to Be Disliked」 Ichiro Kishimi・Fumitake Koga 著 / Atria Books
日本で大ヒットした「嫌われる勇気」は、英語圏でも「The Courage to Be Disliked」として翻訳・出版され、欧米でも広く読まれています。著者の岸見一郎・古賀史健のコンビはそのままに、Ichiro Kishimi・Fumitake Koga名義で2018年にAtria Booksから刊行されました。
内容はほぼ同じです。青年と哲人の対話形式という構成も変わらず、アドラー心理学の核心が丁寧に解説されています。
- タイトル:The Courage to Be Disliked
- 著者:Ichiro Kishimi, Fumitake Koga
- 出版社:Atria Books(Simon & Schuster)
- ページ数:288p
- Amazon評価:4.5以上(英語圏レビュー多数)
この本は、英語学習の副読本として使うのにも向いています。理由はシンプルで、対話形式の文章が多く、会話表現が自然に身につくからです。日本語版で内容を把握してから英語版を読むと、難しい部分でも意味を推測しながら読み進められます。
| 読み方 | おすすめの人 |
|---|---|
| 日本語版のみ | アドラー心理学をすぐに理解したい人 |
| 英語版のみ | 上級〜中上級の英語力があり、英語で哲学的対話を楽しみたい人 |
| 日本語版 → 英語版の順に読む | 内容を理解したうえで英語表現を学びたい人(最もおすすめ) |
英語版の副題は「The Japanese Phenomenon That Shows You How to Change Your Life and Achieve Real Happiness」。海外では「日本発の自己啓発本」として、日本的な思想へのアクセス口としても機能しているようです。Goodreadsやレビューサイトでも評価が高く、欧米の読者にも刺さっていることがよくわかります。
英語多読の習慣がある方や、TOEICや英検の勉強をしながら「ついでに使える本を読みたい」という方には特におすすめです。
ここまで読んでくれた方に、大切なことをお伝えします。アドラーの教えを完璧にやりきろうとすると、逆に不幸せになるパターンがある、ということです。
たとえば「原因論の否定」を厳格に適用して、今の辛い状況を「自分が過去に甘えているだけだ」と過剰に自分を責めてしまうこと。あるいは「褒めちゃダメ」という教えを守りすぎて、誰のことも一切褒めない人間になってしまうこと。
承認欲求まみれな日本社会で育ってきた私は、正直なところ、たまには褒められたいんですよね。それを完全に否定する必要はないんじゃないかと思っています。
きっとアドラー自身が望んでいたのは、私たちがこの心理学に縛られることではなく、この心理学を使ってよりハッピーになることのはずです。
アドラー心理学は「正解」ではなく「ツール」として使いましょう。自分がハッピーになるための選択肢の一つとして取り入れることが、もっとも賢い付き合い方だと感じています。
- 原因論を否定して目的論で生きる——過去や原因に行動を縛られるな。人生は今この瞬間から変えられる。
- 課題の分離——自分の課題と他人の課題を切り分けよ。他人の課題に悩むのは疲れるだけ。
- タテの関係を作るな——褒めるのではなく感謝せよ。対等な横の関係が承認欲求からあなたを解放する。
- 頑張っているのに劣等感が消えない人
- 人の評価が気になって疲れてしまう人
- 「自分には変われない理由がある」と感じている人
- 対人関係の悩みが絶えない人
- 英語版「The Courage to Be Disliked」で英語多読もしたい人
いろんな大変なことが続く毎日でも、アドラー心理学をうまいこと活用して、自分でコントロールできることに注力して、過去に縛られず、今この瞬間から楽しい人生にしていきましょう。
「嫌われる勇気」は書店でもAmazonでも手に入ります。英語版の「The Courage to Be Disliked」もあわせてチェックしてみてください。

